勝手に書評 -3ページ目

【うそうそ】著者:畠中 恵

畠中 恵
うそうそ
【一言評価】
おっと、長編

【こんな方にお薦め】
前作 おまけのこ を読まれた方
安心して読みたい方

【管理人感想】
しゃばけシリーズは短編ばかりだったのですが今回は一冊で完結の長編。珍しいですね。
面白かったですよ。

山神様の娘、姫神様の比女ちゃんと守役の天狗達
雲助の新龍


姫神様を守るために天狗達は若だんなを襲う。何のいわれもなく若だんなを襲撃された佐助に天狗が言った言葉

「我らの方が悪党で、己の方が善だと思っておるのだろう?まあ、誰だとてそんなものだ」
 だが、どう考えていかに動くのが正しいのか、皆、己で決めたものを中心に持っている。その大本の考えがそれぞれに違うから、どこでも、誰にでも通用する絶対的な「正しい」は、あるようで無いのだ。(P175)

実生活で、よくぶち当たります。だから「・・・・うん」と頷いてしまう。深いです。結局どちらの背景をとるかになってきちゃうのよね。でもどちらの背景をとるべきか判断つかなくてそのまま流すしかなくなる場合が多い・・・。

妖が見えてしまう新龍は昔は武士だった。ある日、武士仲間の勝之進の姉お富代に妖がついているのを見て顔色を変えた。勝之進は何を見たのか新龍に問い詰めてきた。新龍は相手がお富代さんだったから父の戒めを破ってしまう。お富代さんに取り付いたあやしの影についてしゃべってしまった。お祓いをしてもらってお富代の頭痛はすっかりよくなった。ところが、口止めしたのに勝之進がことの経緯を他で話してしまう。噂が広まると、隣の範の身分高き者が、頼みごとをしてきた。喉元に大きな腫れを作った子供をつれてきて、この病は妖魔の仕業だから退治して欲しいと言い張った。しかもこの隣の範とは千年揉めたせいもあってか上役にもきちんと名乗って挨拶をしている。しかし、どうみても妖も鬼もついていなかった。子供はほんとうに病気だったのだ。新龍ではどうにもならなかったから無理だと言ってもなまじお富代を救ったことがあったものだから無理だと言っても誰も納得してくれない。打つ手のないまま子の容態は悪くなりついに死んでしまう。範を預かる方々で騒ぎとなる。叱責は方々へ及んだ。他藩の者とのいざこざを上役が嫌ったからだ。
新龍には覚えのない噂が立った。
 いわく、隣の範と千年揉めたから、それ故に新龍は、わざと子を見殺しにしたのではないか。
 いわく、親子が差し出した金品が、足りなんだのではないか、などだ。
勝之進や上役だった孫右衛門が訪ねてきて「とにかく一旦藩から離れてくれ」と頭を下げられた。新龍が消えてくれれば、騒ぎを収めにかかれる。藩の為だからと。

ここでもまた藩の為なら人一人犠牲になってもよいという。何を一番と考えるかで善が変わります。

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シリーズ第一弾 しゃばけ
シリーズ第二弾 ぬしさまへ
シリーズ第三弾 ねこのばば
シリーズ第四弾 おまけのこ



【おまけのこ】著者:畠中 恵

畠中 恵
おまけのこ
【一言評価】
前作より少し明るい(前作はちょっと暗かった)

【こんな方にお薦め】
前作ねこのばばを読まれた方
安心して読みたい方

【管理人感想】
今回は前作よりもすこし軽いというか前作のような重さがありません。こちらの方が好きかな。

最近続けてこのシリーズを読んでしまってます。
はじめてこのシリーズを読んだ時は続けて読む事になるとは全く思っていなかったけれど、お決まりのキャラクターと毎回解決する短編が寝る前に読むにはちょうどいい。
起きた時に全く覚えてないことがありますが。
私にとってはちょうどよい睡眠薬でしょうか。

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シリーズ第一弾 しゃばけ
シリーズ第二弾 ぬしさまへ
シリーズ第三弾 ねこのばば


【ねこのばば】著者:畠中 恵

畠中 恵
ねこのばば

【一言評価】
キャラクターが深くなり愛着がわく

【こんな方にお薦め】
前作を読まれた方
安心して読みたい方

【管理人感想】
しゃばけシリーズ第三弾です。前作は手代(使用人)の仁吉の恋の話に絡めて長崎屋に来たいきさつが分かります。今度は手代の佐助がなぜ長崎屋にきたのかを「産土」で描いています。
読んでいて、「え!!!!!!」
ドキリとします。アセアセ。
若だんなの一大事なのに仁吉がでてこないからおかしいなおかしいなって思ってたらそういうことでしたか。

第三弾ともなるとこんなものかと思って最初読んでいましたが、佐助の「産土」を読んで☆を一つ増やしました。
第四弾を手に取るか、もうやめておくか微妙なところです。欲を言えばもうちょっと繋ぎとめる何かが欲しいところです。

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シリーズ第一弾 しゃばけ
シリーズ第二弾 ぬしさまへ
シリーズ第四弾 おまけのこ



【インタネーットで本を買うなら】


畠中 恵
ねこのばば

【ぬしさまへ】著者:畠中 恵

畠中 恵
ぬしさまへ

【一言評価】
キャラクターが深くなり愛着がわく

【こんな方にお薦め】
前作しゃばけを読まれた方
安心して読みたい方

【管理人感想】
前作「しゃばけ」のシリーズ第二弾。前作と違い、今回は短編6作。

私は前作のしゃばけより 本作ぬしさまへ の方が好きです。
前作の 主人公中心に世界が回っているような 読んでいてこっぱずかしい感覚がありませんでした。(なぜ恥ずかしくなかったのかは分かりません)
前作ですっかりキャラクター像が定着し、短編が生きたようです。

前作では、人ではない者 妖(あやかし)達が人間の若だんな一太郎を何故守っているのかが明らかになっていきました。そして今作ぬしさまへ(仁吉の思い人)では妖の一人仁吉が何故一太郎を守る縁があったのかが描かれています。

それに、前作では・・・・
若だんな一太郎には腹違いの兄がいて、長崎屋ではその兄の存在はなきものだった。松之助が災難に見舞われて長崎屋を頼ってきて、一太郎の両親はいい顔をしなかったが一太郎がどうしてもと言って取り次ぐことになったのだったっけ?!
兄松之助にスポットをあてて描かれた今回の「空のビードロ」では、あぁ・・・そういういきさつで訪ねてきたのかと納得でき、松之助が人のあたたかさに包まれ泣き出した時には目にじわっと込み上げるものがありました。

~ 6篇中の一部小あらすじ ~ (ここから先はネタバレなのでまだ本を読んでいない人は読まないように↓↓)

・ぬしさまへ
男前の仁吉の袂に入っていた恋文の送り主が殺された。仏さんは小間物商天野屋の娘のおくめ。泳げぬおくめは普段川端にも近寄らなかったという。誰かに突き落とされて亡くなったとみている。
恋文を送り、だれかと待ち合わせをしていると言い店を抜け出している状況から、待ち合わせの相手は仁吉だと思われ疑いがかかる。しかしその恋文、字があまりにも下手で何が書かれていてるかさっぱり分からない。ましてや待ち合わせが書かれているなんてことも分かるはずもない。そしてまた、ここ5日ほど若だんなは寝込んでいたという。仁吉たちは付き添いおくめが殺された火事のときは若だんなをつれて3人で逃げたと聞いた。平素から懇意にしている日切りの親分は、仁吉たちが育てたも同然の若だんなの具合が悪いときに、この仁吉が女に会うために店を抜けるなんて考えられないと確信をもつ。
一太郎が妖達に死んだおくめのことを調べさせるとどうもおかしい。妖達の話を総合するとこうだ「おくめはいばりちらすけど優しくて、競争心が強いが慈悲深い。おまけに大店の跡取りが好きなくせに、手代(仁吉)に恋文を出し、師匠への文は女らしい筆遣いなのに、恋文は読めぬほど汚い字で書きなぐる。」これだけで犯人がおさきだと分かるのはなぜなんだ一太郎よ・・・と私は思ったけど、まぁ書かれていないストーリーがあったのでしょう。
おくめの父親が出入りしていた小間物屋のお嬢さんだったおさき。3年前の火事で二親を亡くしてしまい天野屋の女中に入った。情けをかけられ感謝していたおさきはおくめに威張られても我慢したし、おくめが悪筆を隠したくて代筆を頼んだ時も応じていた。おくめは己とおさきの境遇が入れ替わった事を楽しんでいた。おさきが密かに恋心を仁吉に寄せていたことを知ったおくめ。できる手代だった仁吉の周囲の評価は、いずれは番頭になり、暖簾わけだって夢ではなかった。せっかく今は自分が主人、おさきは女中だ。それが仁吉と結ばれればお店のおかみになる見込みがでてくる。それがおもしろくなくておくめは恋文の代筆をおさきにさせた。奉公先のお嬢さんが好きだといっている相手に、女中が思いの丈をぶつけるわけにいかないもの。しかし、どうしても代筆できず悪筆そのままの文を仁吉に届けたのだった。待ち合わせの日仁吉さんがこないからちゃんと文を渡したのか問い詰めてくるおくめ。店をやめる気で、字を渡さずに渡したっていうと、おくめは怒って拳をふるってきた。店をやめる気だったおさきは素直に殴られず組み合っていた。そんな時半鐘の音が鳴った。かき回すような近火の知らせになった。おくめがそれを聞いて、にまっと笑った。3年前の火事は、天野屋にとって、福の神だった。たくさんの店が焼け大勢が死んで財を失い店の借り手が減った。火事の後天野屋はよい場所の店を安く借りる事が出来た。成り上がるきっかけの火事の知らせに、思わず浮かんだ笑み。その笑い顔をおさきの手が掘りに向かって突き飛ばしていたという。
「火事から生き残った事を、氏神様に感謝しているつもりだったんです。真面目に働こう、皆そうして生きてきているんだからって。でも、前みたいにおっかさんが、甘い菓子をくれる事はない。おとっつぁんが、新しいカンザシが似合うと言ってくれる事はもうないんです。」言葉は細かく震えて、小さくなっていく。
「平気だと思っていたのに。あたしいつの間に、心の奥底に鬼を飼っていたんだろう」
哀れむような顔をお先に向けていた岡っ引き。女を堀端から連れて行った。
一太郎は同じ火事のとき、妖達に毛筋一つも傷つかないようにと庇われ守られていた。
同じ冬の風に吹かれても、肌に感じる寒さは違うのだ。守ってくれるものの、あるなしで。

なんとも・・・・。半鐘がきっかけとは。火事にさえなっていなかったら、待ち合わせ場所が川じゃなかったら殺さずに済んだのに。真面目でかわいいおさきさんのような娘さんにどうして支えになってくれる理解者、悲しみを分かち合ってくれる人がいなかったのか・・・。はぁ・・・

・栄吉の菓子
「大変だ。栄吉さんの作った菓子を食べた隠居が死んだ」と日切りの親分の下っぴきが飛び込んでくるところから物語りははじまる。
長崎屋の若だんな一太郎の幼馴染み栄吉。菓子屋三春屋の跡取りの栄吉。
「あの・・・隠居が食べたのは茶饅頭でして。栄吉さんは先ほど番屋に連れて行かれました」下っぴきは何やら奥歯につっかえているような話し方をする。栄吉の作ったものが饅頭だったと聞いて、奉公人らがちらちらを意味ありげな視線を交わした。皆の腹の内を代弁するかのように仁吉がぺろりという。
「なんだい、栄吉さんの作った菓子があんまり不味かったもだから、ご老人、ビックリ仰天して心の蔵が止まってしまったのかね」・・・おいおい(笑)
死んだ隠居は九兵衛。一軒家に一人暮らしの小金持ち。九兵衛は三春屋で茶饅頭を求め、隠居所で食べている最中に急に苦しみだして死んだという。八丁堀の旦那が隠居所で調べていたら九兵衛の柴犬が現れて、隠居が食べかけていた饅頭を食べた。しかし犬が死ななかった事で疑いを菓子から他にもむけたというわけで栄吉は番屋からでてこられた。
まずいまずいと悪態をつきながらもいつも栄吉が作っている菓子を買ってくれる九兵衛は、栄吉にとってはかけがえのない存在だった。その九兵衛が死んで落ち込む栄吉。一太郎は妖たちに命じて事の真相をさぐる。
 小金持ちだった九兵衛は、遺産目当てに近づいてくる親族4人にやすやすと遺産をやるのはしゃくだと思っていた。そこで一計を案じたのであった。そのくわだては同時にお上への挑戦でもあった。
自分の庭に数種類の毒草を植え、親族4人のうちのだれかが訪問してきた時に口にしていた。もし死んだらその時訪問してきた親族が疑われる。(なんちゅー、迷惑な人だ・・・恐ろしいよ あんた)
親族が下手人だとされれば、ほんとうは違うから九兵衛の勝ちでお上の負け。

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シリーズ第一弾 しゃばけ
シリーズ第二弾 ぬしさまへ
シリーズ第三弾 ねこのばば

【インタネーットで本を買うなら】
 
畠中 恵
ぬしさまへ

【一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ】著者:佐藤多佳子

佐藤 多佳子
一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--

【一言評価】
青春スポーツをもっと味わいたくなる

【こんな方におすすめ】
若かれし頃のクラブ活動を思い起したい方
陸上競技を全く知らないけどスポーツに興味のある方

【管理人感想】
陸上の「り」の字もしらない私でしたがあっという間に読んでしまいました。
最初は「陸上」をしらないだけに
・・・・読めるかな?
と思っていましたが、主人公の高校生が陸上初心者なので
その初心者「新二」の視点で描かれており
陸上を知らない私でも充分楽しめました
この本を読んでおかげで「陸上」の楽しみに触れた気分です。

シリーズ第1部から第3部まであり
これは第1部の春から秋の1年目を終えるまでが描かれている


サッカーのサポーターを両親に持ち、
サッカーの天賦の才能を持った兄を持ち、
人生最大の夢は、大きな舞台で、本物の試合で
天才の兄のパスを受けてシュートを決めること。

しかし、受験の失敗、、努力をしても上達しない自分と才能を持った兄との差に卑屈になっていく
劣等感――。
そんな中、高校は
サッカーのレベルを調べず自分の学力にあった公立高校を選んだ。
サッカーをやめてしまってただ3年間過ごすつもりはないと漠然と思っている。

新二の親友「連」もまた短距離走の天賦の才をもつ男。
中学2年の頃は全中7位までの実力を持っていたが、3年になる頃にはなぜか陸上を辞めてしまう。そんな彼を新二はもういちど走らせたいと思う

そんなある日体育の授業で50Mのタイム走で連と走ることになる
50Mで全国で7位のスピードってどんなものなのだろうと連のスピードに興味を抱く
「思いきり走れよ」と連に話しかける
「なんでよ?」と連はだるそうに聞き返す
「おまえは知りたくないのか?早い奴がいたらさ。そいつがどのくらい速いかって」
俺は懸命に考えてしゃべった。
「身体で感じてみたくないか?」
「そうだな」とゆっくりと言った。

連の走りを目の当りにし、何かの衝動にかられる
運動部の人たちに囲まれている連を見つけ
連の服が破けそうなぐらい指に力をこめた。
「おまえ、陸部、入れ 絶対、入れ」

「短けえな、50Mは もうちょい走りたかったな」連はボソッと言った。
新二は急に力が抜けた。ため息がでそうになった。
いつの間にか根岸がきていて(よ!タイミング良~)連は根岸に話しかける
「100あると、もうちょい面白かったよな」
「新二はパワーあるから、後半伸びるタイプなんじゃない?」根岸はうなずいた。
「神谷には俺も驚いた」
「新二も走る?」連は新二尋ねた。
あまりにも何気なく聞かれて、一瞬意味が分からなかった。
次の瞬間、何か強烈な熱い風を吹き込まれた気がした。
「おう」

こうして二人は放課後陸上部に入部をきめる。
ここの新二と連が陸上部に入部するいきさつがイイ!!

高校生が主人公だけどそこに登場する三輪先生がかなりいいです!!!
陸上部の顧問で新二やみんなを導く指導者ですが
こんな素晴らしい指導者に出会いたかった!!と思わずにはいられない
人の成長には素晴らしい出会いが必要ですが
まさにこの三輪先生が彼らの成長に大きくかかわってくるだろうと予感させます(まだ第一部しか読んでないけど絶対この人大きく関係するはずっっ)


入部当初、黄色い髪色の新二に「おまえはサッカーやってたんだって?まあ、サッカーってツラしてんな。黄色い頭して」というが黒くしてこいとは言わず「まあ、別にいいけどね」という。
「俺は髪のことはとやかく言わないよ。黄色いほうが人生楽しいなら、それでいいよ。」という。
そして自分の経験に即して
「どんな人生の重大時にも、外見を偽るもんじゃないって教訓になったな。おまえにも今にわかるよ」と言われる
新二は、この髪でいいといっているのか悪いといっているのか判断がつかないまま月日が流れる
 
 合同合宿に参加した新二たち。全国7位の実力者である連は他校の生徒先生から注目されている。
突然陸上をやめてしまって、名門でもない高校からひょいと復活してしまったことに「なぜ?」と色々聞かれる。
連は面倒な話は相手が誰であろうと拒否で答えない。そんな連に一人の先生は「聞かれたことには返事しろっ」って怒りだす。こうなると逆さまに揺さぶっても連がダンマリなのは知っているからハラハラする新二。
「部活で学校を選ぶんじゃなくて、学校を選んでから部活に入るってフツウなんじゃないですか」と思わず口をだしていまい
「おまえはなんだ?」とにらまれることになる。
「なんなんだ、その髪は!
本当に春高の部員か?見苦しいから、その髪何とかしろ。スポーツマンの髪じゃないだろう。三輪先生は何も言わないのか?こんな陸上部員、俺は今まで見たことないぞっ」
完全にマークされることになる。
新二は三輪先生が自分たちのことで本郷先生に一時間も説教をされたことを聞く。
「おまえら、あんまり俺に迷惑かけるんじゃねえぞ」
新二は合宿で一日中 気にかかっていた事を切り出す
「あの・・・先生 俺、この髪、帰ったら黒くします」
「別に髪の毛で走るわけじゃあるめえしよ」先生は不機嫌な顔でボソリとつぶやいた。
「好きにしろよ」と先生はいう。
「目立つってのは、メリットもデメリットもあるからな。要はエネルギーのプラスマイナスだよ。無駄なエネルギー使って消耗するぐらいなら意味ねえんだよ
一ノ瀬(連のこと)にも言っとけ。いい子にしてろってな。そのほうが疲れない。お得だ」
その言葉が妙に頭に残る新二。何かをしろとかするなって言われたほうが楽だな。スポーツマンとして、いや人間としてのスタンスを問われたみたいでさ。新二は考える。
 俺はこの髪にそこまでこだわりはない。気分転換の延長みたいなもんだから。だけど、つっぱってみるのもいいかもしれない。いろんな人が「黄色い髪のバカ」として俺に注目するなら、そんな視線をはね返すほど速くなってみせる。面白いかもしんない。「神谷健一の弟」なんて視線よりぜんぜんおもしれえよ。
三輪先生が、それでいいって言うならさ。「俺に迷惑かけるな」って口癖のくせによ。どっちが本音なんだい。
と考えさせる。

普通からちょっと外れてしまった新二と連を廃除することなく
一人一人に向き合って導いているように感じます。
最初に「黒にして来い」と言うような先生だったら二人は退部していたかもしれない。
ちょっとなかなかできないことですよね。

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