【一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ】著者:佐藤多佳子 | 勝手に書評

【一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ】著者:佐藤多佳子

佐藤 多佳子
一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--

【一言評価】
青春スポーツをもっと味わいたくなる

【こんな方におすすめ】
若かれし頃のクラブ活動を思い起したい方
陸上競技を全く知らないけどスポーツに興味のある方

【管理人感想】
陸上の「り」の字もしらない私でしたがあっという間に読んでしまいました。
最初は「陸上」をしらないだけに
・・・・読めるかな?
と思っていましたが、主人公の高校生が陸上初心者なので
その初心者「新二」の視点で描かれており
陸上を知らない私でも充分楽しめました
この本を読んでおかげで「陸上」の楽しみに触れた気分です。

シリーズ第1部から第3部まであり
これは第1部の春から秋の1年目を終えるまでが描かれている


サッカーのサポーターを両親に持ち、
サッカーの天賦の才能を持った兄を持ち、
人生最大の夢は、大きな舞台で、本物の試合で
天才の兄のパスを受けてシュートを決めること。

しかし、受験の失敗、、努力をしても上達しない自分と才能を持った兄との差に卑屈になっていく
劣等感――。
そんな中、高校は
サッカーのレベルを調べず自分の学力にあった公立高校を選んだ。
サッカーをやめてしまってただ3年間過ごすつもりはないと漠然と思っている。

新二の親友「連」もまた短距離走の天賦の才をもつ男。
中学2年の頃は全中7位までの実力を持っていたが、3年になる頃にはなぜか陸上を辞めてしまう。そんな彼を新二はもういちど走らせたいと思う

そんなある日体育の授業で50Mのタイム走で連と走ることになる
50Mで全国で7位のスピードってどんなものなのだろうと連のスピードに興味を抱く
「思いきり走れよ」と連に話しかける
「なんでよ?」と連はだるそうに聞き返す
「おまえは知りたくないのか?早い奴がいたらさ。そいつがどのくらい速いかって」
俺は懸命に考えてしゃべった。
「身体で感じてみたくないか?」
「そうだな」とゆっくりと言った。

連の走りを目の当りにし、何かの衝動にかられる
運動部の人たちに囲まれている連を見つけ
連の服が破けそうなぐらい指に力をこめた。
「おまえ、陸部、入れ 絶対、入れ」

「短けえな、50Mは もうちょい走りたかったな」連はボソッと言った。
新二は急に力が抜けた。ため息がでそうになった。
いつの間にか根岸がきていて(よ!タイミング良~)連は根岸に話しかける
「100あると、もうちょい面白かったよな」
「新二はパワーあるから、後半伸びるタイプなんじゃない?」根岸はうなずいた。
「神谷には俺も驚いた」
「新二も走る?」連は新二尋ねた。
あまりにも何気なく聞かれて、一瞬意味が分からなかった。
次の瞬間、何か強烈な熱い風を吹き込まれた気がした。
「おう」

こうして二人は放課後陸上部に入部をきめる。
ここの新二と連が陸上部に入部するいきさつがイイ!!

高校生が主人公だけどそこに登場する三輪先生がかなりいいです!!!
陸上部の顧問で新二やみんなを導く指導者ですが
こんな素晴らしい指導者に出会いたかった!!と思わずにはいられない
人の成長には素晴らしい出会いが必要ですが
まさにこの三輪先生が彼らの成長に大きくかかわってくるだろうと予感させます(まだ第一部しか読んでないけど絶対この人大きく関係するはずっっ)


入部当初、黄色い髪色の新二に「おまえはサッカーやってたんだって?まあ、サッカーってツラしてんな。黄色い頭して」というが黒くしてこいとは言わず「まあ、別にいいけどね」という。
「俺は髪のことはとやかく言わないよ。黄色いほうが人生楽しいなら、それでいいよ。」という。
そして自分の経験に即して
「どんな人生の重大時にも、外見を偽るもんじゃないって教訓になったな。おまえにも今にわかるよ」と言われる
新二は、この髪でいいといっているのか悪いといっているのか判断がつかないまま月日が流れる
 
 合同合宿に参加した新二たち。全国7位の実力者である連は他校の生徒先生から注目されている。
突然陸上をやめてしまって、名門でもない高校からひょいと復活してしまったことに「なぜ?」と色々聞かれる。
連は面倒な話は相手が誰であろうと拒否で答えない。そんな連に一人の先生は「聞かれたことには返事しろっ」って怒りだす。こうなると逆さまに揺さぶっても連がダンマリなのは知っているからハラハラする新二。
「部活で学校を選ぶんじゃなくて、学校を選んでから部活に入るってフツウなんじゃないですか」と思わず口をだしていまい
「おまえはなんだ?」とにらまれることになる。
「なんなんだ、その髪は!
本当に春高の部員か?見苦しいから、その髪何とかしろ。スポーツマンの髪じゃないだろう。三輪先生は何も言わないのか?こんな陸上部員、俺は今まで見たことないぞっ」
完全にマークされることになる。
新二は三輪先生が自分たちのことで本郷先生に一時間も説教をされたことを聞く。
「おまえら、あんまり俺に迷惑かけるんじゃねえぞ」
新二は合宿で一日中 気にかかっていた事を切り出す
「あの・・・先生 俺、この髪、帰ったら黒くします」
「別に髪の毛で走るわけじゃあるめえしよ」先生は不機嫌な顔でボソリとつぶやいた。
「好きにしろよ」と先生はいう。
「目立つってのは、メリットもデメリットもあるからな。要はエネルギーのプラスマイナスだよ。無駄なエネルギー使って消耗するぐらいなら意味ねえんだよ
一ノ瀬(連のこと)にも言っとけ。いい子にしてろってな。そのほうが疲れない。お得だ」
その言葉が妙に頭に残る新二。何かをしろとかするなって言われたほうが楽だな。スポーツマンとして、いや人間としてのスタンスを問われたみたいでさ。新二は考える。
 俺はこの髪にそこまでこだわりはない。気分転換の延長みたいなもんだから。だけど、つっぱってみるのもいいかもしれない。いろんな人が「黄色い髪のバカ」として俺に注目するなら、そんな視線をはね返すほど速くなってみせる。面白いかもしんない。「神谷健一の弟」なんて視線よりぜんぜんおもしれえよ。
三輪先生が、それでいいって言うならさ。「俺に迷惑かけるな」って口癖のくせによ。どっちが本音なんだい。
と考えさせる。

普通からちょっと外れてしまった新二と連を廃除することなく
一人一人に向き合って導いているように感じます。
最初に「黒にして来い」と言うような先生だったら二人は退部していたかもしれない。
ちょっとなかなかできないことですよね。

【関連】
一瞬の風になれ 第二部 ヨウイ
一瞬の風になれ 第三部 ドン


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