【うそうそ】著者:畠中 恵 | 勝手に書評

【うそうそ】著者:畠中 恵

畠中 恵
うそうそ
【一言評価】
おっと、長編

【こんな方にお薦め】
前作 おまけのこ を読まれた方
安心して読みたい方

【管理人感想】
しゃばけシリーズは短編ばかりだったのですが今回は一冊で完結の長編。珍しいですね。
面白かったですよ。

山神様の娘、姫神様の比女ちゃんと守役の天狗達
雲助の新龍


姫神様を守るために天狗達は若だんなを襲う。何のいわれもなく若だんなを襲撃された佐助に天狗が言った言葉

「我らの方が悪党で、己の方が善だと思っておるのだろう?まあ、誰だとてそんなものだ」
 だが、どう考えていかに動くのが正しいのか、皆、己で決めたものを中心に持っている。その大本の考えがそれぞれに違うから、どこでも、誰にでも通用する絶対的な「正しい」は、あるようで無いのだ。(P175)

実生活で、よくぶち当たります。だから「・・・・うん」と頷いてしまう。深いです。結局どちらの背景をとるかになってきちゃうのよね。でもどちらの背景をとるべきか判断つかなくてそのまま流すしかなくなる場合が多い・・・。

妖が見えてしまう新龍は昔は武士だった。ある日、武士仲間の勝之進の姉お富代に妖がついているのを見て顔色を変えた。勝之進は何を見たのか新龍に問い詰めてきた。新龍は相手がお富代さんだったから父の戒めを破ってしまう。お富代さんに取り付いたあやしの影についてしゃべってしまった。お祓いをしてもらってお富代の頭痛はすっかりよくなった。ところが、口止めしたのに勝之進がことの経緯を他で話してしまう。噂が広まると、隣の範の身分高き者が、頼みごとをしてきた。喉元に大きな腫れを作った子供をつれてきて、この病は妖魔の仕業だから退治して欲しいと言い張った。しかもこの隣の範とは千年揉めたせいもあってか上役にもきちんと名乗って挨拶をしている。しかし、どうみても妖も鬼もついていなかった。子供はほんとうに病気だったのだ。新龍ではどうにもならなかったから無理だと言ってもなまじお富代を救ったことがあったものだから無理だと言っても誰も納得してくれない。打つ手のないまま子の容態は悪くなりついに死んでしまう。範を預かる方々で騒ぎとなる。叱責は方々へ及んだ。他藩の者とのいざこざを上役が嫌ったからだ。
新龍には覚えのない噂が立った。
 いわく、隣の範と千年揉めたから、それ故に新龍は、わざと子を見殺しにしたのではないか。
 いわく、親子が差し出した金品が、足りなんだのではないか、などだ。
勝之進や上役だった孫右衛門が訪ねてきて「とにかく一旦藩から離れてくれ」と頭を下げられた。新龍が消えてくれれば、騒ぎを収めにかかれる。藩の為だからと。

ここでもまた藩の為なら人一人犠牲になってもよいという。何を一番と考えるかで善が変わります。

【ブログ内関連記事】

シリーズ第一弾 しゃばけ
シリーズ第二弾 ぬしさまへ
シリーズ第三弾 ねこのばば
シリーズ第四弾 おまけのこ