勝手に書評 -7ページ目

【シーラという子】著者:トリイ・L・ヘイデン

【一言評価】

人に必要なものは「愛情」

【こんな方にお薦め】
学校の先生
教育者関係
じぶんがわるいからいけないんだ とおもっているこどもたち





【管理人感想】
この話が ノンフィクション であるという事に衝撃を受けました。
ここまで劣悪な環境とは・・・。
そしてこの劣悪な環境が特別な事ではないという事実に。

6歳の女の子が、近所に住む3歳の男の子を連れ出し、
その子を近所の植林地の木にしばりつけて火をつけた。
と言う記事を教師トリイは目にします。
その時はまだ、自分がその6歳の女の子の教師になるとも知らずに。
(アマゾンのプレビューとほとんど同じ感じになりそうなので、あらすじは今回書きません)

本書の舞台は70年代アイオワ州
精神的にも肉体的にも虐待を受け、愛を知らずに生きてきた6歳の少女シーラが
初めて自分を受け入れ、愛してくれる教師に出会って
愛情 信頼 絆 などに触れた5ヶ月間の様子を、その教師自身が書いた実話である。

「愛情」がいかに人にとって大事なものか。
私の嫌いなあの人やあの人も、もしかして被害者なのかもしれない。

貧富の差が広がる(二極化が進む)と専門家が言っているのをよく聞くが、
広がれば、本書のような環境、シーラのような被害者が生まれるのではないか。
道徳が必要だと思っていたが、貧富の差となると道徳だけでは補えない。

バランスとれるだろうか 日本。



【ネットショップで本を買うなら】
シーラという子―虐待されたある少女の物語(著)トリイ・L. ヘイデン, Torey L. Hayden, 入江 真佐子/Amason

【生きる】著者:乙川優三郎

【一言評価】
生きるのに必要なこと

【こんな方にお薦め】
戦っている方
孤独な方
歴史が得意、時代小説が好きな方
生きるとはどういうことか知りたい方
漢字が得意な方

【管理人感想】
●「生きる」
●「安穏河原」
●「早梅記」
の計三編の短編を収めている。

外国ではまだまだ、日本イコールハラキリの国というイメージがあるのでしょうか。舞台はまさにそのハラキリの時代でした。

この本「生きる」を読む前にまず追腹という言葉をしりましょう。
追腹とは、家臣が死んだ君主の後を追って切腹する事です。(詳細は※を参照 私みたいに歴史に疎い方は参照を読んでおくと良いですよ)
追腹の精神と現実(時代背景が分かる人は飛ばしてください
このお話の少し前の乱世では、家臣は戦場で命懸けで戦います。この頃、生きて捕えられる事を恥としていましたので切腹は当たり前だったのです。
鎌倉時代から戦国時代の終わりにかけての内戦で、切腹は武士の間に定着。この時期切腹は武士の死に方を示す、哲学的、思想的死生観を象徴するようになりました。
さて、徳川家康によって統一された日本は250年近くにわたる平和となります。戦で忠誠や武勇を示せた武士は忠誠心を見せる場所を失ったわけです。そこで、追腹によって主君への忠誠ぶりを誓おうとしました。やがて、追腹をする人数が多ければ多いほど家臣の忠誠が高いという風潮になります。こうなってくると本来の忠誠の意味からは外れる追腹も出てきそうですね。追腹は有能な家臣を失うばかりか、病人や老人に腹を切らせて加増を目論んだりする者が出たりしていた。そんな頃のお話。

藩主が病で床にいて2年がたち、いよいよ恩義に報いる為追腹の覚悟をしていた主人公 石田又右衛門(いしだ またえもん)。

しかし筆頭家老の梶谷半左衛門(かじたに はんざえもん)は追腹を禁止しよう考えていた。
梶谷家老は、藩の中でも特に追腹をしそうな石田又右衛門と小野寺郡蔵(おのでら ぐんぞう)を呼び出し追腹を禁じる密約を結ばせ誓紙をかかせた。

藩主が亡くなってすぐ梶谷家老は追腹を禁止する禁令を出した。家中に動揺が走る――。
しかし、いくら家老の禁令とはいえ武家の殉死は武家の人生観の重要な部分の一つ。それを否定されて簡単にハイソウデスカとはいきません。禁令後、次々と追腹をする者が出ます。

さてここから石田又右衛門の苦悩が始まります。

藩主の恩顧厚い又右衛門が追腹を切らない事に対して同僚からは白い目で見られ――。
奉公人が次々と辞めていった。
嫁いだ娘からは憎しみを向けられ――ある日、人づてに娘が気が触れたことを耳にする。
娘の奇行を知った妻・佐和(さわ)の容態が悪化し、妻を湯治場へ転地させる。
又右衛門は妻がいない間に息子の元服を行い、娘と娘の嫁ぎ先との和解のめどをつけて、妻が帰ってきた時には、妻に娘の姿を見せてやりたいと考えます。
そのために又右衛門は梶谷家老の力を借りようと考える。
成り手のない息子の烏帽子親を頼み、娘の嫁ぎ先との和解に労をとってもらうつもりだった。
梶谷家老にもそれくらいのことをする義理はあると思っていたの。

ところが、梶谷家老は又右衛門と会おうともせず用人に用件だけを聞かせてけんもほろろに断られる。

(T_T)うるうる 断られた又右衛門の気持の描写がうまい。やるせない思いが伝わる。
一部抜粋―。
重職たちの権力争いに自分が何の関わりがあるのだろう。追腹を断念したのは御家の将来のためであって、梶谷家老の手先になったわけではない。未だに家中には白い目で見られ、実の娘にはちくしょうとまで言いわれ、息を殺して生きているのも御家のためではないか。
(それを、命じた当の家老までが邪魔者扱いとは・・・)
梶谷半左衛門への怒りとともに込み上げてきたのは、失う一方で得るもののない、ただそこに生きているという虚しさだった。

さて家路についた又右衛門にさらなる不幸が――。

ストーリーのつづきは本で。

又右衛門と小野寺郡蔵はイバラの道を歩んだけど
小野寺郡蔵は自殺し
又右衛門は生き延びた
この違いに目を向けたい。

読んで良かったぁー。
短編だけど短編とは思えないほど濃い。


【インターネットショップ】
生きる (著)乙川優三郎 /Amazon

【サウスバウンド】著者:奥田英朗

奥田 英朗
サウス・バウンド  /Amazon
【一言評価】
個人単位で勝負できる器

【こんな方にお薦め】
大人の方ならどなたでも
学生運動経験者、右翼の方、左翼の方

【管理人感想】
元過激派の父を持つ小6男子の視点で書かかれたお話。テンポもよく一気に読めます。
思わず あっはっはっ と笑ってしまう箇所が随所にあります。ただ面白いだけでなく考えさせられる部分がある。なんといっても元過激派の父「上原一郎」が魅力的。区役所の国民年金課の人が来ても「とっとと帰れ。国民年金なんぞ払わんと言ったら払わん」と吐き捨てます。屁理屈ばかり言って稼ぎのない父親の屁理屈にも「お?」っとひっかかるものの、稼ぎがなく家族を困らせる父親に、最初の頃はダメ親のレッテルを貼りました。が、読み進むうちに魅力を感じていきます。
  父一郎の論理に頷くところが沢山あった。集団を隠れ蓑に汚い事を「する」「させる」「してしまう」という事ってよくある事。そんな集団、体制の腐敗に絶望して過激派を脱退した彼は集団や体制を嫌います。過激派じゃなくても今日のいたる所、官や会社や学校でもこのような集団心理の悪が蔓延していますよね。
脱退後、彼は自分自身が集団に属せず個人で行動する。
強い!強い精神力の持ち主。一般人には到底マネできないことです。
 この本の中で父一郎が何度か「テンカイしてみろ」と言います。
論理を展開(証明)してみろと言います。
上司などからの受け売りを目的の為に自分の都合のいいように利用して触れ回る人がいますよね。
「実際に今はみんなどこでもそうなんですよ」(根拠ナシ)
「みんなって誰ですか?」
「・・・●●とか」(●●も大きなカテゴリで的を得ない)
「●●って例えばどこですか?」
と、更に追求すると
はぐらかす。(・・・やっぱり誤魔化すために言うてたな(怒))
私も一郎みたいに「テンカイしてみろ」と言ってみたい(笑)
受け売りだけじゃなく、物事の真実をみるようにしたいですね。ましてや、自分に都合よく真実を捻じ曲げるような事はしないようにしないとね。

サウスバウンド文句なく三ツ星です^^


【この著者その他の作品】
イン・ザ・プール ←この本は評価☆です

【夜盗】著者:なかにし礼

書名:夜盗 著者:なかにし礼

【一言評価】
犯罪者を作るのは闇

【こんな方にお薦め】
警察関係の方
犯罪者の方
児童養護施設関係の方
なかにし 礼
夜盗

【管理人感想】
本にグイグイ惹きつけられるということはなかったのが残念。
だが、中身を見てほしい。

マニラからの引き上げ孤児として衣笠にある愛好学園という、戦後の日本で一番にできた孤児院で育った柏田と孤児院(養護施設)「マリアの家」の主人マリアとの恋の話。

マリアと柏田はお互い愛好学園で一時を共にしている。(柏田とマリアは11歳年が離れている)
先に高校を卒業した柏田は警察学校へ
一方、柏田の見えないところでマリアに襲いかかる数々の闇・裏切り
これらがマリアの犯罪に手を染める心の口実になる。

刑事となった柏田と犯罪に手を染めたマリアの恋はどうなるのか――。

【インターネットショップで本を買うなら】
夜盗 (著)なかにし礼 /Amazon
【この著者のその他の作品】
長崎ぶらぶら節 の書評  ←この本は評価☆☆☆のお薦め本です

2005年今年読んだ本ランキング

メリークリスマス
最近サボりがちの私です。ちゃんと生きています(笑)
本読む時間がなくて・・・汗

12月って忙しいね。
調べる事も沢山で、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

最近何やら スクラップブック とかいうものができたようで。
それを調べる事もまだしてません。
暇なときにでも・・・(タブン)

で、書く事も特にないし
2005年 今年読んだ本の中でランキングでもつけようかなと・・・。

2005年ランキング
順位 書名 著者 リンク
1位 告白 町田康 このブログ内の掲載記事へは此処から飛べます
2位 邂逅の森 熊谷達也 このブログ内の掲載記事へは此処から飛べます
3位 長崎ぶらぶら節 なかにし礼 このブログ内の掲載記事へは此処から飛べます

私の独断と偏見でのランキングです。
ベストスリーまでつけて力尽きた
注:ランキングは12月31日までの間に変更する事があります。