【一瞬の風になれ 第三部 ドン】著者:佐藤多佳子 | 勝手に書評

【一瞬の風になれ 第三部 ドン】著者:佐藤多佳子

佐藤 多佳子
一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

【一言評価】

青春、スポーツ、

【こんな方にお薦め】
前向きになりたい方
熱くなりたい方
スポーツ好きな方

【管理人感想】
「一瞬の風になれ」の第三部の「ドン」の方です。たぶん最終話。
少し物足りなかったような気が・・・。それでついつい 二つ星 にしてしまいました。
いや、いいのですいいのです。メインは陸上ですから。

気まぐれな天才の一ノ瀬連が、しっかりトレーニングをしてタフになっていてほっとしました。

ネタバレ↓
新人鍵山と桃内の関係
新しく部に入ってきた1年の鍵山くん。100m出場権争いがあって1年の鍵山と2年の桃内に微妙な空気がながれる。鍵山が桃内を嫌っているような感じかな。
鍵山の能力を認めた桃内は、自分の得意なバトンのコツを鍵山に教えようとする。
例え相手がどんなやつでも、サッと相手の能力を認め、行動に移す桃内って素敵だなー。
だんだんと二人が仲良くなっていくところがイイ。゚+.(゚ー゚)ノ。+.゚ ♪

鍵山はトゲトゲしてて自己中というかなんというか・・・。
この部で、この素敵な先輩達と出会わなかったら、どうなっていたか・・・とふっとよぎった。

新人鍵山をどう受け入れるかリレメン
4継に有望な選手鍵山を迎える事になったが、今までのメンバーの方が安心できると思うリレメンがどう新人鍵山を受け入れていくかが見所。

谷口若菜と新二の恋は?!
インターハイ予選 3000m
みんなが応援してるんだけど、私も心の中で応援してた(笑)もうちょいっもうちょいっって(笑)
後三人!後二人!ナイスラン!
ゴール
どっちだ?いけた?
新二は走り寄った。他のみんなもいた。
谷口と目があった「神谷くん!」
谷口は新二を呼ぶと飛びついてきた。
「神谷くん!」
谷口を抱きかかえるような格好に。
キャーーーー。恥ずかしい(笑)いいなぁー青春だねぇ・・・。大胆だけど。
でもこれだけ・・・もうちょっと何か進展があってもよかったような・・・。

予選、まさかのレース
これまでやってきたのは何なんだ。ムカつく。なんで、できねえんだ。あんなに練習したのに。なんで、こんな・・・。
予選、かろうじて拾われた。3位以下では一番良いタイムだったから。
何かが違っていた。
緊張でGがかかった。重力、重圧がかかった。

「いいとしようや」騒ぎの中、三輪先生がゆっくりリレメンに向かっていった。
「これは予選だ。勝負は明日だ」
先生は青ざめた顔をしていた。こんな顔はみたことがない。無理にニヤッと笑おうとして引きつった顔をしていた。
何かを振り払うように首を乱暴に揺すった。みっちゃんらしくなかった。これまで、俺達のどんな失敗にも挫折にも、みっちゃんはこんなにこわばった顔をみせたことはない。一緒に泣くことはあっても。
 ふいに思い出した。みっちゃんが南関東の4継の決勝でバトンを落としたことを。
「こういうことはあるんだよ」
三輪先生の言葉が重く胸に響いた。
「それが今日でよかった」
 そして、先生はやっと本物の笑みを浮かべた。まるで過去にタイムスリップして俺達と同じ高校生に戻ってしまったみっちゃんが無事に戻ってきたみたいだった。レースに失敗した選手から、先生に。

夕食の後の反省会で――。
「みんな、言いたいことは色々あるだろうが、決勝は明日だからな。一ヵ月後じゃないからな。反省は、とにかく実践的にやろう。前向きにな。感情的になるな。ゴメンナサイ。スミマセン。というのはなしだぜ」
「今日のここが、まずかったので、明日はこうしようというのを具体的にやれよ。特にバトンの相手とな。そうだな。まず、俺がざっくりまとめるか」
先生はリレメンの顔を一人ずつ見ていった。
「鍵山。フライングは気にするな。スプリントやってて、あれをやらねえ人間はいねえんだ。あせって飛び出さなくてもいいからよ。ゆったり構えてしっかり出ろ。身体がふらつかなけりゃ大丈夫なんだから。どうだ?緊張しちまったか?どのへんから緊張した?」
「コースに入ってからです」
鍵山は答えた。
「その前からも緊張はしていたんですが、なんか、スタブロをセットしてるあたりから、急に来て・・・。なんか、目が見えなくなってくるような感じで。視野が狭くなるっていうか、白っぽくなるっていうか。なんか、五感がすごく鈍くなってるみたいで、ピストルが聞こえない気がしてあせりました」
先生は笑った。
「そりゃー重症だ。どうだ、神谷、覚えがあるか?」
「ありますよ」
イヤな指名だなと思いながら答えた。部では有名なレーン間違いの話を鍵山にしてやる。
次に桃内も・・・。
こういう風に話して緊張をほぐすように反省会がすすんでいく。

果てしなく積み重ねてきた練習、その練習どおりにやれば、いい結果がでるはずだった。
でも、できなかった。そして思い知らされたのは、練習どおりとか、フツウとか、そんな単純なものじゃないってことだ。レースは生き物だ。4継のレースなんて、もう暴れ馬だ。熟練の決勝という大舞台で、暴れ馬を乗りこなすには、日頃の熟練の技を生かすも殺すもレース本番のその場の勘と本能にかかってくる。

重い言葉ですな。陸上のりの字も知らない私もなんとなく分かる気がする。
一つ一つ一生懸命やるしかないよね。

「いつも通りいうことで」
「いつも通りで」
リレメンは結論を出す。当たり前の結論を、ぐるりと大まわりして考え抜いてポンと出した。

部長というポジションについてだけど、
実力がある天才の連と
失敗を重ねて実力がついてきた新二の2択なら
やはり失敗を経験している新二の方がいいね。
人の痛みなどが分かる事って大切だから。

読んでいて、大昔の事をいくつもいくつも思い出してしまいました(照)

前向きになれる本でした!

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一瞬の風になれ 第二部 ヨウイ